マンガ大賞2011年、2013年、共に2位。そして2014年大賞を受賞した作品が、森薫先生の「乙嫁語り」です。この漫画は、いわゆる時代漫画。19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の地域を舞台に描かれています。
漫画のタイトルにもなっている「乙嫁」とは、
一人の夫に嫁した妻妾のうち、年長者が年少者を呼ぶ語。(大辞林)
とあり、「弟の嫁」「年少の嫁」を意味する言葉となっています。出版元であるエンターブレインでは「乙嫁」を「美しいお嫁さん」の意であると記しているそうです。
森薫さんと言えば、「エマ」というヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台にした物語を描いた作者です。美しい絵と歴史を共に楽しむのが、森薫さんの漫画の特徴ですが、今回の乙嫁語りはまさに美しいの一言。
何が美しいかって、街並みや風景が美しい。
織物など細かい小物が細部まで美しい。
なんといっても乙嫁が美しい。
という三拍子そろった美しさ。一生懸命生きる乙嫁の姿は現代では忘れ去られている何かを思い出させてくれる。
淡々とすぎる日常を舞台にしています。途中で戦争があったりとハラハラドキドキすることもあるんですが、基本的には前向きに健気に生きている登場人物がカッコイイ。20歳の花嫁、アルミ。そして12歳の花婿、カルルク。8歳もの歳の差があるが、2人はゆっくりと夫婦の絆を深めていきます。
その時代、男の人は結納金をたくさんためて、お嫁さんをもらいます。お金持ちではないと結婚できないというシビアな世界。そして結婚相手も基本的には自分の両親が決めます。今の日本ではお金がなくても紙切れ一枚で結婚できます。また、乙嫁語りのヒロインは20歳でお嫁に行きましたが、「20歳だと歳を取りすぎている」という世界。
びっくりしますね。現代では30歳の未婚女性はたくさんいるのに。昔は、早く結婚してたくさん子どもを産むことが大切だったんでしょうね。子ども=お金がかかる、のではなく、子ども=財産。という感じでしょうか。確かに乙嫁語りの暮らし方を見ていると、人手は多ければ多いほどいいという感じがします。皆さん働き者ですし。
現代の日本と19世紀後半の中央アジアの違いを大きく感じながら、一生懸命生きている漫画の登場人物を見ながら、「もっと頑張って生きよう!真面目に生きよう!」と思いました。結婚するために、自分で小物100点以上に刺繍するなんて今では考えられない世界です。
ということで乙嫁語りの評価です。
総合評価 ★★★★☆(4.3)
ストーリー ★★★★☆
キャラ・設定 ★★★★☆
画力 ★★★★★
森薫先生の長編1作目の「エマ」も読みましたが、ダントツに絵がうまくなっていますね。その絵の美しさはため息が出るほど。現在は、9巻まで購入できますので、ぜひ読んでみてください。